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労災事故の発生
業務中もしくは通勤中の事故により労働者が怪我や病気となり、医療機関に入院や通院を一定期間継続する。
労働者は医療機関において治療を行なうとともに、事故の事実関係をきちんと把握する。
労災保険の給付申請
勤務先の会社に労災と認めてもらい、所管の労働基準監督署にて給付手続(療養補償給付、休業補償給付)を行なう。
医療機関での治療の結果、後遺障害が残る場合は障害等級認定を得られる手続(障害補償給付)を行なう。
勤務先の会社への損害賠償請求の検討・交渉・訴訟
労災事故の原因が勤務先会社の安全配慮義務違反に基づいて生じた場合、労働者は会社に対して、労災給付を受けた部分を除いて損害賠償を請求できる可能性があります。
安全配慮義務とは「使用者が、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」義務であり(労働契約法5条)、使用者である会社は労働者を勤務させる場所や施設、使用する機械や器具等から労働者の生命、健康に生じる災害を防止する措置を講じておく必要があります。
そのため、会社に安全配慮義務違反がないかどうかについて検討し、安全配慮義務違反があれば、請求し得る損害額を算定の上、会社に対して請求を行ないます。
交渉により労働者が納得できる損害額を会社から支払ってもらえれば、合意書を作成した上で手続は終了となります。
会社が支払を拒否する場合などは、訴訟を提起し裁判で解決することになります。
労災保険の手続のポイント
労災保険の手続のポイントは、障害等級認定を得られるかどうかという点になります。
障害等級第1級から第7級に該当する場合、障害補償年金及び障害特別年金が毎年支給され、障害特別支給金が一回のみ支給されます。
障害等級第8級から第14級に該当する場合、障害補償一時金、障害特別一時金、障害特別支給金が一回のみ支給されます。
そのため、障害等級認定を得られるかどうかで労災保険から支給される金額が大きく変わることになります。
労災保険給付と民事上の損賠賠償請求の違い
労災保険給付においては療養費、休業補償、障害補償などが認められますが、労災保険で得られた給付が、労働者が受けられるべき損害額の全額ではありません。
つまり、労災保険の休業補償給付については、直近3ヶ月の平均賃金を前提に1日あたり60%相当額が支給されます。そのため、実際の休業日数の40%分の金額は労災給付ではカバーされません。
障害補償給付については障害等級が認定された場合であっても、労働者への補償額は民事上の損害賠償請求額である後遺障害に基づく逸失利益の一部をカバーするに過ぎません。
また、労災保険では、慰謝料などの精神的損害は補償されることはありません。
このように、労災保険給付の補償範囲は、民事上の損害賠償額の一部に過ぎないため、労災保険給付では補償されない損害額については、別途、勤務先の会社へ請求することになります。
なお、会社への損害賠償請求が認められるためには、会社の労働者に対する安全配慮義務違反が認められなければなりません。もちろん労働者が会社に民事上の損害賠償を請求する場合、労災保険から給付を受けた金額については控除しておく必要があります。
弁護士に相談や依頼することで、被害に遭われた労働者の方が適切な労災給付の補償を受けることができるとともに、会社側の安全配慮義務違反に基づく損害賠償についても請求できる場合があります。労働災害に遭われた方はまずは弁護士に相談することをお勧めします。