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1 使用貸借とは
使用貸借とは、動産や不動産を無償で使用させることを言います。賃貸借は貸主が借主から賃料を受け取るのと引き換えに動産や不動産を使用させる場合と異なります。このように賃貸借と異なるのは、使用貸借は貸主及び借主の人的信頼関係に基づいてなされるからであり、またこのような点を特徴とします。
一般的には使用貸借という言葉はあまり馴染みがないかもしれませんが、親族間において無償で不動産を利用させている状況は使用貸借となります。例えば、親名義の建物に子どもが無償で居住している場合などは使用貸借の典型例と言えます。
2 使用貸借契約の終了時期について
使用貸借契約は、通常、親族間でなされることが多いため、契約書というかたちで書面化されていることはあまりありません。
そのため、使用貸借契約の終了時期が問題となることがありますが、民法は3つの終了時期を定めています(民法597条)。
- 当事者間で期間を定めた場合は、使用貸借契約は期間が満了により終了する。
- 当事者間で期間を定めなかった場合、使用目的や収益目的を定めていたときは、その目的に従い使用及び収益が終わった時に終了する。
- 借主の死亡により、使用貸借契約は終了する。
また、民法は貸主もしくは借主から契約を解除できる場合があることを定めています(民法598条)。
- 当事者間で、使用目的や収益目的を定めていた場合は、使用収益が終わらなくとも、借主が使用収益するのに足りる期間が経過したときは、貸主は契約を解除することができる。
- 当事者間で期間や使用目的などを定めなかった場合は、貸主はいつでも契約を解除することができる。
- 借主はいつでも契約を解除することができる。
3 「借主が使用収益するのに足りる期間が経過したとき」とは
民法では、前述のとおり借主が使用収益するのに足りる期間が経過したとき貸主は契約を解除することができると定めているのですが、この点についてはどのように判断するのでしょうか。
特に居住目的で不動産を期間の定めなく使用貸借している場合に問題となります。つまり、もともとは親族間で土地や建物などの不動産を使用貸借していたものの、子や孫の世代に変わり、居住期間が長期に及んでいる場合などは、貸主としては返還を求めたいと考えることから使用収益するに足りる期間が経過したのかどうかが問題となります。
この点、実務や裁判例は、使用の目的、使用の具体的態様、使用期間、貸主及び借主側のそれぞれの事情などを総合的に考慮します。
最高裁判例(平成11年2月25日付け判決)は、木造建物の所有を目的とする土地の使用貸借について、契約締結後38年8ヶ月を経過し、この間に貸主と借主の間の人的つながりの状況が著しく変化しているという事実関係の下では、借主には右建物以外に居住する所がなく、貸主には右土地を使用する必要等特別の事情が生じていないというだけでは、使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定することはできない旨判断しています。
最も重視されたのは、実際に経過した期間と解されており、同種事案を検討する場合、使用貸借契約が結ばれてからの期間が長期に及んでいれば、貸主は契約を解除できる可能性が高くなります。
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