賃貸人が通常の電気料金に様々な諸経費を加算して賃借人に請求することの可否

1 マンションやビルでの電気料金などの光熱費の請求

       マンションやビルなどの一室を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結しますが、一戸建てや家族用マンションであれば、通常、賃借人が電気、ガス、水道などの光熱費の料金は電力会社やガス会社と直接供給契約を結びますので、基本料金及び毎月の使用料は、自分たちが使用した分について請求されることになります。

これに対して、商業ビルでは様々な業態の個人や法人が賃借人となっていることもあり、賃貸人から毎月の賃料に電気料金や水道料金が加算された請求書にもとづいて支払っている場合がよくあります。賃借人の多くがこれらの光熱費についてほとんど疑問を持つことなく、請求されるままに支払っているのではないでしょうか。

2 賃借人が負担すべき電気料金が問題となった事例

     賃貸人が未払の電気料金を請求し、賃借人が電気料金の払い過ぎを主張して裁判になった事例(東京地裁平成27年2月27日判決)があります。

 事案は、ビルオーナーである賃貸人が、賃借人に対して電気料金を2年間滞納しているとして訴訟を提起したのですが、賃借人の方でも、賃貸人から電気料金を過大に請求されて払ってきたとして、過大に請求された金額の返還を求めて反訴を提起しました。

  この事案では、賃貸人が、実際に賃借人が使用した電気料金に加えて、ビルの管理料や人件費、金利リスクなどを考慮して毎月の電気料金を請求しており、このような請求が認められるかが争点となりました。

  結論としては、賃貸人と賃借人の間で、電気料金などの課金方法や計算方法などの取り決めがなされたこともなく、賃貸借契約書にも課金方法や計算方法の記載もなかったことから、賃貸人が通常の電気料金に管理料など様々な諸経費を加算して請求することは認められませんでした。一方で賃貸人に対し、賃借人が過大に支払った電気料金を返還するよう認めております。

3 賃貸借契約における電気料金や水道料金などの定め方

      賃貸人としては、賃借人に対し、電気料金や水道料金などの光熱費を請求するにあたり、通常の使用量に諸経費を加算するのであれば、賃貸借契約時点で賃借人に対して、課金方法や計算方法を説明した上で賃貸借契約書にも明記しておく必要があるでしょう。

 もっとも、諸経費を加算するとしても、あらゆる経費を電気料金などに上乗せすることは認められるとは解されず、関連機器の保守管理費など合理的な範囲に限定されることになります。上記裁判例でも電気料金に加算される費用としては関連機器の保守管理費のみが認められております。

  賃借人としては、賃貸人からの電気料金や水道料金の請求額がどのように計算されているのか一度確認した方がいいでしょう。

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