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多額の保証債務について私的整理で解決した事例

2020-12-21

1  事案内容

  依頼者は20年ほど前から、個人事業を営む知人が金融機関から借り入れるにあたって連帯保証人となってい ました。借入金の返済は知人が続けておりましたが、本年3月にその知人が亡くなってしまいました。ほどなくして金融機関から保証人である依頼者へ今後の返済に関して連絡がありました。借入金額を確認したところ、数千万円以上となっており、依頼者にとってはとても支払える金額ではなかったため、ご相談に来られました。

2 事案の分析及び解決方法

 依頼者に事実確認をすると、亡くなった知人の相続人は全員が相続放棄をしており、金融機関は貸付債務を回収するには、知人から担保として取っていた不動産を処分するか、依頼者から返済してもらうことだけでした。依頼者の資産等からすると、保証債務額は多額であったため返済能力を超えておりました。個人再生を検討しましたが債権者が金融機関1社であったことから保証債務額のうち一部を返済することで私的に整理することができないか、まずは交渉してみることにしました。

  金融機関からは依頼者の資産のすべて開示を求められましたので、資料を揃えて開示するとともに、依頼者が返済可能な金額を提案しました。

  金融機関への金額の提案の根拠としては、亡くなった知人が所有していた不動産の市場価値を控除した上で、依頼者が破産を選択した場合や個人再生を選択した場合に金融機関へ返済されるであろうおよその金額を併せて算出の上、提案しました。

  最終的には、金融機関はこちらの提案額に同意してくれましたので、合意書を作成の上、依頼者が合意した金額を一括で返済することで解決することができました。

3 まとめ

  本件では、依頼者は破産や個人再生を行わずに保証債務額の10%以下の金額を返済することで済みましたので満足していただきました。また、私的整理で解決することができましたので、依頼を受けてからわずか2ヶ月半程で終了しました。

  現在では経営保証ガイドラインなどに基づく私的整理が整備されており、これまで破産しか方法がなかった事案でも私的整理で解決できる場合があります(会社を再建(再生)させるための方法 | アーツ綜合法律事務所 (arts-saimu.com)。

 

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遺産に債務がある場合の相続の解決事例

2020-12-11

1 事案の内容

  依頼者は配偶者を亡くし、相続が開始したところ、被相続人である配偶者には信販会社等の借金があることが判明し、他の相続財産には不動産があったものの、どのように対応することが最もよいのかわからないため相談に来られました。法定相続人は依頼者本人と子ども2人の3人でした。

2 事案の分析及び解決方法

  依頼者に事実確認をすると、亡くなった配偶者だけでなく、依頼者本人も複数の債権者からの借り入れがあり、両者合わせて数百万円程の負債がありました。プラスの相続財産としては不動産があり、依頼者が居住していました。依頼者は引き続き不動産に居住したいとの意向でしたので、依頼者が債務も含めて相続することにしました。ただ、子ども2人のいずれもが相続放棄をすることも考えられるのですが、子ども二人が相続放棄をすると被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる事案でしたので、この点を回避するため子どものうち1人が相続放棄することにしました。

  依頼者ともう一人の子と遺産分割協議を行い、依頼者が負債を含めてすべての遺産を相続するとの内容の分割協議を成立させました。

  その後、依頼者と被相続人の債権者及び依頼者が借り入れた債権者との間で交渉し、分割払いを行っていくとの債務整理を行いました。もちろん、相続財産としての負債については遺産分割協議により法定相続人の一人が相続するとしても、債権者には対抗できませんが、実際には債権者は依頼者が今後、分割で支払っていくとの債務整理には応じてくれました。

3 まとめ

  本件は依頼者が不動産に引き続き居住する意向を持ち、相続した負債については長期の分割であれば返済していくことができる収入があったことから、相続放棄、遺産分割、債務整理を組み合わせて処理を行いました。また依頼者の意向が明確であったので、比較的な短期間ですべての手続を終了することができました。

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節税のための養子縁組について

2020-11-25

1 養子縁組の要件について

  養子とは親子関係を出生という血のつながりではなく、当事者の意思により生じさせる制度を言います。養子が成立するためには、形式的要件としては届出が必要ですが、実質的要件として縁組をする意思が必要となります(民法802条)。そして、養子縁組により親子関係が成立すると、養親が亡くなった場合、当然のことですが養子も相続人となります。

2 養子がいる場合の相続税の基礎控除額について

  相続が発生した場合、遺産が多いと相続税を納めなければなりませんが、相続税の計算に当たり基礎控除が認められており、現行法では、3000万円に加えて600万円に相続人の数を乗じた合計金額の控除が認められております(相続税法15条1項)。例えば、相続人が3名の場合、基礎控除額は4800万円(=3000万円+600万円×3人)となります。

 そうすると、遺産の多い人は、生前に自分の孫などを養子とすれば基礎控除額が増えることになりますので、節税のため養子縁組をして養子を増やそうとする人も出てくるかもしれません。しかしながら、この点については、相続税法上、被相続人に実子がいる場合は、相続税の計算上、相続人として数えられる養子は1人であり、被相続人に実子がいない場合には相続人として数えられる養子は2人となっております(相続税法15条2項)。つまり、相続税法上は、無制限に養子縁組をして養子を増やしても、基礎控除額として算入される養子を制限しております。

3 節税のための養子縁組は認められるのかどうかについて

  では、そもそも節税のために養子縁組をした場合、果たして当事者間に縁組意思が認められるのでしょうか。

  この点について、判例(最高裁平成29年1月31日・民集第71巻1号48頁)は「相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」と認定しております。つまり、節税目的があったとしても、養親子関係を生じさせる意思が併存している場合は養子縁組を行う意思はあるとしました。当然のことながら、単に節税のためだけに養子縁組を仮装した場合は養子縁組の意思は否定されることになります。

 もっとも、注意すべきことは、節税目的のための養子縁組につき縁組意思が否定されなかったとしても、実際に基礎控除額が増えるかどうかは相続税法の規定によることになります。つまり、相続税を不当に減少させる場合には、養子を基礎控除額の算定の相続人入れることができなくなりますので(相続税法63条)、専ら節税目的のために養子縁組を行うことは止めた方が良いと言えます。

 

  相続のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

 

相続放棄と空家の管理責任について

2020-11-09

1相続放棄者の義務

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄をすることができます(民法915条1項・相続放棄をしたい方へ)。相続を放棄すれば初めから相続人とならなったものとみなされます(民法939条)。相続放棄が実際になされるのは、遺産に借金が多い場合、不動産などの資産があっても価値がない場合、相続争いに巻き込まれたくない場合などです。

 ただ、相続放棄をしても遺産に不動産、預金通帳や動産がある場合、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条1項)と規定されており、放棄した相続人には管理責任が課されております。通常であれば、第1順位の相続人である子が放棄した場合、その子が第2順位の両親や第3順位の兄弟姉妹の相続人に遺産を引き渡すまで管理責任が継続することになります。

 では、第1順位である子の他に第2順位や第3順位の相続人がいない場合に、第1順位の子が相続放棄した場合、その子は遺産について管理責任を負担し続ける必要があるのでしょうか。

 このような場合、最後の相続放棄者である子は遺産の管理責任を負い続ける必要があります。遺産の管理責任を免れるためには、相続放棄者が利害関係人として家庭裁判所へ相続財産管理人の選任の申立てる必要があります(民法952条)。もっとも、相続財産管理人の選任申立にあたっては、少なくない額の予納金を納めなければならず、この点が、相続財産管理人の選任を申し立てることを躊躇する原因となっています。

2相続放棄した遺産が空家である場合の問題

(1) 近隣住民等に対して生じる責任

  遺産のうちに空家がある場合、前述しましたように相続放棄した者が最終放棄者である場合、遺産の管理責 任が継続することになります。このような状況において空家で火事が生じ近隣の建物に被害を被らせた場合や空家の瓦が落ちて近隣の建物に被害を与えた場合などは、相続放棄者が管理責任に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります。相続を放棄したからという理由で、責任を免れることはできないといわなければなりません。

 相続放棄者が管理責任を免れるには、前述しましたように相続財産管理人を選任して、空家を除却したり、売却するなどして処分してもらう必要があります。

(2) 行政に対して生じる責任

  平成27年に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、「空家法」といいます。)が制定され、行政も増え続ける空家対策に乗り出しております。

  空家法で規定された施策のポイントは、行政において特定空家を認定し、特定空家の所有者や管理者に対し、除却、修繕などの周辺環境の保全を図るために必要な措置を助言、指導、勧告、命令することができます。

  特定空家とは放置すれば倒壊の危険がある状態や衛生上有害となるおそれのある状態など、周辺の生活環境の保全を図るため放置することが不適切である状態の空家のことをいいます(空家法2条2項)。

  所有者が行政の命令措置に従わなかった場合、行政が行政代執行法により除却などを行い、それに要した費用について所有者に対して納付命令を行います。

  では、最後の相続放棄者は、倒壊等の危険がある空家に対して、行政から助言、指導、勧告、命令を受ける対象となるのでしょうか。つまり、放棄者自らの費用で除却する必要があるのでしょうか。最後の放棄者が放棄後も管理責任を負うとされていることから問題となります。

  この点、管理責任を負う最後の放棄者についても空家法3条の適切な管理を行う努力義務を負いますが、前述した空家法14条の命令を受ける対象とはなりません。つまり、最後の相続放棄者は放棄した空家につき倒壊の危険があっても、行政の命令を受ける立場にはなく(但し、行政から助言、指導、勧告を受ける名宛人とはなります。)、最後の放棄者は自らの費用で除却する必要はなく、仮に行政が代執行に基づき建物を除却した場合でも、除却にかかった費用を納付する義務もありません。

 

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相続分の譲渡が贈与に該当する場合について

2020-10-29

1 相続分の譲渡とは

 父母の一方が亡くなり相続が開始した場合、残された配偶者や子どもたちなどの相続人の間で遺産分割協議が行われます。しかし、相続人の中には遺産は要らないので、遺産分割協議には参加したくないと考える者もいます。このような相続人が取りうる方法としては、相続放棄(民法939条・相続放棄をしたい方へ)と相続分の譲渡があります。

 相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に申し立てることによって相続を放棄する制度であり、放棄を申し立てて裁判所に受理されると、その相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされます。一方、相続分の譲渡とは相続人の一人が、他の相続人や第三者に自らの相続分を譲渡することを言います。相続分の譲渡を定めた規定は民法上ありませんが、一般的に認められた手続です。また相続分の譲渡を前提とした規定が民法にはあります。相続分の譲渡は相続放棄と異なり、裁判所へ申し立てる必要はなく、譲渡当事者間で行うことができるので、よく利用されております。

 相続分の譲渡が行われた場合、譲渡を認めたくない他の相続人は何らかの主張ができないのでしょうか。

 まず、相続分の譲渡が第三者になされた場合には、譲渡人ではない他の相続人は譲渡された相続分の価額を支払った上で、自らがその相続分を譲り受けることができます(民法905条)。しかし、相続人間で相続分の譲渡が行われた場合、他の相続人は譲渡行為を阻止することはできません。

 このように相続分譲渡がなされると、相続分を譲渡した相続人は、相続人ではなくなるので遺産分割協議に参加する必要がなくなり、相続分を譲り受けた相続人は、自らが取得する相続分が増えることになります。また、相続分を譲り受けたのが第三者であれば、第三者が他の相続人との遺産分割協議に加わることになります。

 2 相続分譲渡が贈与に該当する場合について

 相続分譲渡を受けた相続人は、被相続人が残した遺産からの取得分が増えるわけですが、他の相続人は相続分譲渡につき何らかの主張ができることがあるのでしょうか。

 この点についての判例(最高裁平成30年10月19日判決・民集72巻5号900頁)があります。事案を簡略化しますと、まず父親の遺産相続の際に、二男が母親から相続分の譲渡を受けて、長女を含む他の相続人とともに遺産分割協議を成立させました。次に母親が亡くなり相続が開始した際に、父親死亡時に母親から相続分譲渡を受けた二男に対して、長女が相続分譲渡を受けた点について遺留分を侵害しているとして主張したのです。争点は、遺留分算定(遺留分侵害額の計算)にあたり、相続分譲渡が贈与として算定の基礎財産にあたるのかが問題となりました。

 上記判例は、「共同相続人間においてなされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産に価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する贈与に当たる。」と認定し、相続人間の無償による譲渡が贈与にあたることを認めております。つまり、相続分譲渡を行った譲渡人が死亡し新たな相続が開始した場合、譲渡当事者ではない他の相続人は相続分を譲り受けた相続人に対して、特別受益や遺留分算定のための贈与に当たる旨主張することができることになります。

 

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不動産賃料を保証会社が代位弁済した場合の賃貸借契約の解除の可否

2020-10-14

1家賃保証会社の役割

 マンションやビルなどの一室を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結しますが、通常、仲介業者を通じて契約します。そして契約を締結するにあたって、保証人を求められることが原則となっており、賃借人が個人であれば自分の親族(通常は両親のいずれかが多いです)を保証人とすると思われます。もっとも、最近は、賃貸人が賃料の滞納を防止するために、保証会社を保証人とすることもよくあります。

 保証会社の役割は、賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人に対して滞納賃料を代わって支払うところにあります。これによって、賃貸人としては家賃が回収不能となる危険がなくなります。仮に保証会社と契約していなければ、賃貸人としては賃料の回収をあきらめて、賃借人に退去してもらうことでよしとしなければならなくなります。また、賃借人が勝手に出てしまい残置物が残っている場合であれば、賃貸人が訴訟を提起し、強制執行を行う必要があり、余計な費用がかかることになります。

 そして滞納賃料を代位弁済した保証会社は賃借人に請求していくことになります。

2改正民法における保証契約のあり方

 改正民法では、賃貸人が個人保証人と保証契約を結ぶ場合、極度額を定めなければならないとしております(465条の2)。これは、個人保証人が知らないうちに滞納賃料が多額になっていることがあるため、あらかじめ極度額を決めておくことで個人保証人の保護を図ることにしたのです。しかしながら、保証会社が保証人となる場合は、極度額を定める必要はありません。

 もっとも、保証会社は、賃貸人と保証契約を結ぶ際には、保証する金額の範囲を定めることが通常です。

3保証会社の代位弁済後に、賃借人に対する賃貸借契約解除及び建物明渡の可否

 保証会社が滞納賃料を賃貸人に支払った後、賃借人が保証会社に支払えば問題ありませんが、賃借人がそれ以降も賃貸人に支払うことなく、保証会社が賃貸人に支払い続けた場合、賃貸人は賃借人との賃貸借契約を解除し建物の明け渡しを求めることができるのでしょうか。保証会社が賃貸人に賃料を支払っている以上、賃借人に滞納がないのではないかが問題となります。

 この点について争われた裁判例(大阪高裁平成25年11月22日判決)があります。

 同裁判例では、「賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払いではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく、ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」と認定し、賃貸人による賃貸借契約の解除及び建物の明け渡しを認めました。賃借人は最高裁へ上告しましたが、棄却・不受理となり、確定しております。

 このように保証会社が賃貸人へ代位弁済したとしても、賃借人の賃料不払いの事実は無くなることはありませんので、賃貸人としては、3ヶ月以上、保証会社から支払ってもらっているのであれば、賃借人との賃貸借契約を解除することが可能となります。

 不動産のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

個人破産制度における免責不許可事由と非免責債権について

2020-08-06

1 破産制度とは

  破産制度の目的とは、債権者、債務者及び利害関係人の権利関係を調整し、債務者の財産を公平に精算し、債務者の経済生活の再生の機会を確保することにあります。この内容が破産法1条に記載されております。

  破産手続を利用する債務者にとっては主に経済生活の再生を図ることにあります。経済生活の再生を図るとは、債務者が裁判所から免責許可決定を得ることにより、負債(借金)がすべて免責されるということを意味します。つまり簡単にいうと債権者に対して返済しなくてもよくなります。しかしながら、破産手続を利用しても負債が免責されない免責不許可事由と免責の効力が及ばない非免責債権が規定されています。

2 免責不許可事由とは

  免責不許可事由とは、破産手続を利用する債務者の行為を原因として、負債(借金)の免責を認めないとするものです。免責不許可事由は破産法252条1項に記載されています。主な免責不許可事由には以下のものがあります。

 (1)不当に財産を減少させる行為

 債権者への支払いが不能となった後に本来であれば清算対象となる財産を債務者が勝手に使用したり、処分したりする場合です。

 (2)不当に債務を負担し、不利益な処分行為

 債権者への支払いが不能となった後、著しく不利益な条件で債務を負担したり、信用取引で商品を買い入れ著 しく不利益な条件で処分する場合です。典型的にはクレジットカードで購入した商品をすぐに廉価で換金する行為が該当します。

 (3)不当に特定の債権者のみに返済する行為

 既に支払不能になっているにもかかわらず、特定の債権者のみに返済したり担保の設定をしたりする場合をいいます。

 (4)浪費や賭博などによる財産減少行為

 自らの生活レベル以上に財産を散財したり、競馬やパチンコなどのギャンブルなどで借金が増大した場合をいいます。

 (5)詐術による信用取引

 破産手続開始申立前開始1年前の日から破産手続開始申立までの間に支払い不能にありながら、住所、氏名、生年月日や負債額などの信用状態を偽り、借金や信用取引をする場合をいいます。

  これらの免責不許可事由があると、免責が認められず負債が残ったままになるのかと疑問に思われれるかもしれませんが、多くの場合は裁量的に免責が認められております。免責不許可事由がある場合でも、弁護士に話していただき、破産申立の際に正直に記載することが重要となってきます。

3 非免責債権とは

  破産手続を利用し、最終的に裁判所から免責許可決定が得られると原則として負債(借金)の返済義務がなくなります。しかしながら、一部の負債については免責の効果が及びません。このような免責の効果が及ばない負債を非免責債権と言います。非免責債権について破産法253条1項に記載があります。具体的には、➀税金、➁破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、③破産者が故意、重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、➃養育費や婚姻費用、⑤雇用関係に基づいた使用人の請求権、⑥破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権、⑦罰金等の請求があります。

4非免責債権に関する裁判例

 上記3➁については、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するのかどうか争われた裁判例(東京地裁平成28年3月11日判決)があります。事案は、原告が、被告に対し、被告の原告夫との不貞行為を理由としての慰謝料を請求したものとなります。被告は訴訟係属中に破産開始決定を受けるとともに免責許可決定を得たところ、原告は、被告の行為は悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するので非免責債権であると主張しました。原告の慰謝料請求権が非免責債権であるとすれば、被告が免責許可決定を得ていたとしても、原告に対して慰謝料を支払わなければなりません。

 裁判例では、「悪意」とは「故意を超えた積極的な害意」であるとし、本件では被告の原告夫との不貞行為の態様や不貞発覚直後の原告に対する対応などから、被告の不法行為の違法性は低いとはいえないしながらも、原告夫の行為を考慮した上で、被告が一方的に原告夫を篭絡して原告の家庭の平穏を侵害する意図があったとまでは認定できず、被告には原告に対する積極的な害意があったということはできないとしました。結論として原告の慰謝料請求権は非免責債権に該当しないとされ、被告は慰謝料の支払義務を免れました。

 もっとも、本裁判例のように不貞行為に基づく慰謝料請求権がすべて非免責債権に該当しないというものではなく、個別具体的事情によれば非免責債権に該当することになります。

 破産手続において免責不許可事由に該当するのではないかや非免責債権に該当するのではないかなどのお悩みや疑問がある方は初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

 

 

 

 

 

解決事例(被相続人死亡後、第三者から生前贈与を主張され訴訟で解決した事例)

2020-07-27

1事案の概要

 本件は、被相続人が所有する自宅であり、同人の亡夫が生前経営していた会社の本店所在地ともなっていた土地建物につき、同社が既に休眠状態であるにもかかわらず、同社の取締役である被相続人の親族Aが使用しておりました。そのため、被相続人の子らから依頼を受けて、Aを相手方とする土地建物明渡し及び賃料相当損害金の請求をした事案です。Aからは、土地建物につき被相続人から生前贈与を受けたとして所有権移転登記手続請求がなされました。

2事案の特色

 この事案では、被相続人の夫が亡くなった際に既に高齢であったにもかかわらず被相続人が名目上会社の代表取締役となっており、Aが会社に多額の貸付をしていたとのことで、事実上の休眠状態後も代表取締役から外してもらえず、会社の休眠手続もとってもらえない状態が続いておりました。

 さらに、高齢で財産管理のできない被相続人の状態に乗じ、Aにより被相続人の自宅を譲渡させられることを危惧した依頼者の一人が被相続人の成年後見申立を行い、自ら補助人となりました。しかし、その間、被相続人は自宅の所有権をAの子に譲渡する売買契約書とともに、Aに対する高額な借金があること、その借金額を売買代金にあてることなどの覚書まで署名させられてしまっており、依頼者にとっては不利な状況となっておりました。

3交渉及び訴訟

 まずは親族間のことでもありましたので交渉から入りましたが、Aは土地建物の明渡しを頑なに拒否し、会社の清算手続にも全く協力してもらえませんでした。

 そのため、Aを取締役から解任した上で、依頼者が代表取締役に就任して会社の休眠手続をとることから始めました。

 その後、訴訟提起しましたが、Aからは被相続人が署名した売買契約書や覚書、利害関係のないはずの被相続人の友人複数人の証言等の証拠が提出されました。そのため、こちらもAから提出された証拠を一つ一つ精査するとともに証拠収集を行い、証人を確保することで、尋問等を経て一審では勝訴判決を得ることができました。Aから控訴されましたが、控訴審では一審を前提とした勝訴的和解ができ、Aから土地建物を円満に明け渡してもらった上で、解決金の支払いを受けることで無事解決することができました。

4結語

 本件は依頼者にとって不利な証拠があり、状況的には厳しいものがありましたが、証拠集めも含め依頼者とともに粘り強く行い戦い抜いた結果、勝訴的解決に結び付くことができました。依頼者にも大変満足していただきました。

 相続、遺産分割などでお困りの方は、当事務所までお早めにご相談下さい。

新型コロナウィルス対応での電話・Zoomでの法律相談のご案内

2020-05-11

 現在、新型コロナウィルス対応の一環としてまして、当面の間、法律相談につきましては面談に加えて、お電話やZoomにても対応させていただいております。

    1.  ご希望の方は事前にお電話もしくはホームページからのメールにてご相談予約をお願いいたします。
    2.  ご予約の連絡をいただきましたら、相談日時を調整の上、決めさせていただきます。
    3.  お電話もしくはZoomでの法律相談をご希望の場合、相談日時に当事務所からご指定の方法でご連絡させていただき、ご相談をお受けいたします。
    4.  なお、従来どおり面談での法律相談も受けつけておりますが、安全確保のため、弁護士のマスク着用、相談テーブルの消毒を行っておりますので、ご了承下さいますようお願いいたします。

 なお、初回相談は無料とさせていただいております。

 電話番号 075-223-6111

 アーツ綜合法律事務所

 

 

 

 

 

新型コロナの政府支援策について

2020-04-20

 事業者の中にはコロナ感染拡大により、業務に支障が生じている方もおられ、今後の先行きに不安を感じておられることと思われます。既にご存じの方もおられるでしょうが、今後の資金繰りに不安を感じておられる事業者は政府の支援制度をご利用されることをお勧めいたします。以下の経済産業省のサイト(https://www.meti.go.jp/covid-19/)をご確認下さい。

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