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遺産分割事案の解決事例

2026-05-05

 

1 事案内容

 本件は亡くなった父親の遺産に関する兄弟間の遺産分割の紛争ですが、亡父の遺言書がありました。亡父の遺産には不動産、預貯金、現金、株式、保険などがありましたが、亡父は不動産に関する配分についてのみ遺言書を残していました。亡父は生前、不動産賃貸事業を営んでおり、所有していた不動産の多くが収益物件(賃借人から賃料が支払われる物件)でした。そして、遺言書の内容は、一部を除き、ほとんどすべての不動産を兄に相続させるものでした。そして、遺言書に記載のなかった現金や預貯金などの分割をめぐって、兄弟間で話し合いがまとまらず、兄が遺産分割調停を家庭裁判所へ申し立てました。当職は弟の代理人として本件紛争に関わることになりました。

2 事案の争点

 裁判での主な争点は、➀亡父の遺言書から「持戻し免除の意思表示」が認められるのか。②不動産の評価でした。

 ➀の持戻し免除ですが、通常、被相続人(遺産を残して亡くなった両親など)が生前に相続人の一人に贈与や遺贈を行っていた場合、 その相続人は被相続人から特別受益を受けていた者として、残りの遺産を分割する場合、既に受け取っていた特別受益については控除されることになります。そのため、特別受益を受け取っていた相続人は残りの遺産からの配分を受けられないか、もしくは減少することなります。しかし、被相続人が遺言書などに特別受益としない旨記載しておくと、特別受益として計算しないことになります。このことを「持戻し免除の意思表示」(民法903条3項)と言います。

 本件では、亡父の遺言書には兄へ相続させた不動産について、「持戻し免除の意思表示」は記載されていなかったですが、兄から亡父は黙示に「持戻し免除の意思表示」をしていたと主張していたことから争点となりました。

 本件では持戻し免除の意思表示が認められると、兄は亡父の遺言書により多くの収益不動産を取得しているにもかかわらず、残りの現 金や預貯金などについても法定相続分(本件では2分の1)を取得できることになります。

 ②の不動産の評価ですが、相続税申告では、不動産は通常、土地は路線価で評価されるため、実勢価格と乖離が生じることになります。そのため、相続人間の取得価額を正確に算出するためには、不動産鑑定を行う必要があります。本件においても、兄弟間の正確な取得価額を算出するため、不動産の一部については鑑定を行っております。

3 本件事案の経緯及び結論

 兄が家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、当初は調停で話し合いをしておりましたが、兄弟間の主張の隔たりが大きく、結局調停 は不成立となり、審判に移行しました。

 審判では、弟側である当方は、亡父が兄の不動産取得について黙示の持戻し免除の意思表示をしていないことを主張するとともに、 残りの現金や預貯金を法定相続分どおりで分割すると、兄の取得分が大きくなりすぎること(この点は不動産鑑定の結果から明らかでした。)を主張しておりました。

 また、亡父の遺言書は相続分の指定を伴っており、兄の遺言による取得分が、法定相続分を超える場合は、兄は残余財産の分配には関与できないため持ち戻し免除が問題となる余地はないことをも念のため合わせて主張しました。

 しかしながら、第1審では、被相続人の黙示の持ち戻し免除を認めたため、兄に対して現金及び預貯金について法定相続分どおりの分割を認めました。

 そのため、弟側である当方は高等裁判所へ即時抗告を行いました。そして、高等裁判所における決定では、亡父の遺言書を特定財産承継遺言(民法1014条2項)として相続分の指定を含む遺産分割方法の指定がなされたものとして、遺言書による兄の取得分が法定相続分を超える場合、現金や預貯金などの残余の遺産については分割には与れず、「持戻し免除」はそもそも問題となる余地はないと認定し、第1審の認定が覆りました。

 兄は許可抗告や特別抗告を行いましたが、いずれも認められず、高裁の決定が確定しました。

4 まとめ

 本件は、家裁の判断が高裁で変わっているように、争点を捉えることが困難な事案でした。そのため、争点に対して主張していくに際して、想定される有利な点については全て主張していくことが必要であると感じました。

 本件は裁判途中で不動産鑑定も行われたことから調停申立から高裁決定まで3年程の時間がかかりました。やはり裁判での解決は時間がかかることになり、長丁場の戦いとなります。

 

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特別受益と使途不明金

2026-04-30

 被相続人(ご両親など)が亡くなられ、相続が発生すると、相続人間では遺産分割協議を行い、遺産をどのように分けるのか話し合う必要があります。

 相続人間で円滑に話し合いができるのでれば、問題がないのですが、被相続人の生前に相続人の一人が贈与を受けていた場合もしくは被相続人の生前に相続人の一人が被相続人の預金口座から金員を引き出していた事情などがある場合においては、これらについてどのように処理すべきであるのかをめぐって話し合いが紛糾することがよくあります。以下、場合に分けて説明します。

1 特別受益である場合

  相続人の一人が被相続人から生前に贈与を受けていた場合、この相続人は遺産の前渡しを受けていたものとして、本来受け取るべき遺産から前渡し分を控除されることになります。このような前渡し分を「特別受益」と言います。特別受益として一般的に知られているのは、婚姻のための費用、学費、生計の資本などが挙げられます(民法903条1項)。

  これら例示として挙げられているものは、使途が明確であるため、相続人間で特別受益として認めることに比較的支障は少ないと思われます。

  もっとも、相続人全員が、被相続人(両親など)から婚姻費用や学費を出してもらっているのでれば、これらの費用は特別受益として考慮しないことになります。

  しかし、被相続人の世話をしていた相続人が親の預金口座を管理しており、度々、預金口座から引き出しがある場合などについては、親の生活費として使用されたのか、引き出した相続人が受け取ったのかが、よくわからないこともあるため問題となります。

  親の生活費として使用しているのであれば、世話をしていた相続人の特別受益となることはありません。また、親の預金口座から引き出した金銭が、近接した時期に世話をしていた相続人の口座に入金されている場合は、贈与とみなされる可能性が高くなります。このような贈与が生計の資本とみなされるのであれば、特別受益となります。

2 使途不明金の場合

  実際には生活費として使用したものであるのか、そうでないのかの区別は容易ではありません。親の世話をしていた相続人の引き出し額が長期間、多額に渡っている場合は特にそうです。

  このような場合はすべてが生活費や贈与とは言えない場合が多く、使途不明金となります。

  相続人間の話し合いで、世話をしていた相続人が、使途不明金を自らの使用と認めるのであれば、本来取得すべき遺産から控除するなどの方法で解決することも可能となります。

  しかしあくまで、世話をしていた相続人が使途不明金については認めないのであれば、協議での解決は困難となります。

3 取るべき手続について

  このような場合、遺産分割調停を申し立てても、世話をしていた相続人が使途不明金を認めることはありませんから、調停が成立することはありません。

  そのため、民事訴訟として不法行為に基づく損賠賠償請求訴訟もしくは不当利得返還請求訴訟を提起する必要があります。

  親を世話していた相続人は訴訟においては、生活費とみなされる以上の金員の引き出しについては、その使途については納得できる程度に説明する必要があります。当該相続人が納得できる程度の説明ができなければ不法行為に基づく損害賠償を負ったり、不当利得として返還しなければならなる可能性が高くなります。

  遺産相続において特別受益や使途不明金がある場合やその区別がつかない場合、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

 

フランチャイズ事案の解決事例

2024-12-11

1  事案内容

 依頼者は、不動産の退去立会の代行等をあっせんするフランチャイズ事業に加盟したのですが、フランチャイズ事業本部は、開業のための試験に合格しなかったことを理由として依頼者の開業を認めず、退去立会の代行のあっせんもしませんでした。訴訟提起前に依頼者の代理人弁護士からフランチャイズ事業本部に依頼者が支払った費用の返還を求めましたが、返還には応じてもらえなかったために、フランチャイズ事業本部を相手として損害賠償請求を求めて裁判所に提起しました。これに対してフランチャイズ事業本部からも違約金などの請求が反訴としてなされました。

2  事案の分析及び解決方法

 訴訟での主な争点は、フランチャイズ事業本部の説明義務違反があるのか、依頼者の損害としての逸失利益が認れられるのか、依頼者にフランチャイズ事業に加盟するにあたって落ち度(過失)が認められるのかでした。他にも特定商取引法上の違反することについても争点としておりました。

 判決では、開業可能性の有無の説明が適切になされなかったこと、適切な収益予測が提供されていなかったことなどが認定され、フランチャイズ事業本部の説明義務違反が認められました。

 逸失利益についてはフランチャイズ事業に加盟しなければ他で就職して得られたであろう収入を求めていたのですが、この点については依頼者の請求は認められませんでした。

 依頼者の落ち度(過失)ですが、通常、同種訴訟では、フランチャイズ事業といえども加盟者も独立した事業体であるとか、加盟者自身が加盟前にフランチャイズ事業をきちんと調査しなかったとか、加盟者が過去に会社経営や個人事業の経験があるなどを根拠として損害額の3割から7割程度の過失相殺がなされてしまいます。しかし、本件ではフランチャイズ事業本部が依頼者に対して開業可能性及び収益予測について不正確又は誤った情報を提供した著しい落ち度があるとして、過失相殺を一切認めませんでした。また、反訴においてフランチャイズ事業本部が求めていた違約金請求は認められませんでした。

 フランチャイズ事業本部は高等裁判所へ控訴しましたが、控訴審においても第1審の内容がそのまま維持されることを前提で和解いたしました。

  最終的に依頼者はフランチャイズ事業本部に支払った費用の全額の返還を受けることができました。

3  まとめ

  本件は、当初フランチャイズ事業本部と交渉しようとしましたが、結局、話合いで解決できなかったため訴訟を提起して解決した事例となります。裁判所が依頼者の落ち度を一切認めずに依頼者が支払った費用の全額を損害と認めたことが他の同種訴訟では見られない点といえます。ただ、訴訟提起から控訴審での和解まで2年半程の時間がかかりました。やはり訴訟での解決は時間がかかることになり、長丁場の戦いとなります。なお、フランチャイズ事業については十分に検討されてから加盟をすることをお勧めいたします【フランチャイズ事業の加盟を検討している方へ | 京都市中京区で初回法律相談無料のアーツ綜合法律事務所】。

 フランチャイズ事案でお困りの場合は、是非アーツ綜合法律事務所へご相談下さい。

 

フランチャイズ訴訟雑感

2022-09-23

 これまでにフランチャイズ本部や加盟店から多くの相談を受けてきましたが、フランチャイズ事業もコンビニだけでなく実に様々な事業があります。中にはフランチャイズ事業として成り立つのか疑問に思うものもあります。

 相談を受ける中でいくつかの訴訟を手掛けてきましたが、本部や加盟店のいずれの立場であっても訴訟で争うことは双方にとって「労多くして益少なし」という印象が拭えません。フランチャイズの場合、契約前に本部が提示した収益予測と加盟店が実際に開業した時の売上が大きく異なることから当初の説明と違うということで訴訟になるケースがほとんどです。

 訴訟になると加盟店に本部の説明義務違反を立証する必要があるのですが、立証に成功して本部の説明義務違反が認められたとしても、損害を算定する段階で裁判所は加盟店も独立の事業者であるとかフランチャイズ事業を精査せずに安易に意思決定をしたなどの理由により過失相殺がなされてしまうので、認定される損害額がかなり減額されてしまいます。このように本部にとっては損害賠償責任が認められると事業の見直しを迫られるでしょうし、加盟店にとっては実際に被った損害額よりも低い額しか認められないことが多いといえます。

 このような訴訟実態を考えると、フランチャイズ事業に加盟することを検討されている方は、検討している事業につき複数社からの説明を受けるとともに、自らも事業内容を納得するまで徹底的に検討し疑問があれば解消しておく必要があります。やはり安易に意思決定をしないことが重要といえます。一方、本部についても本部だけの利益追求の事業を構築するのではなく、本部・加盟店の双方が共存できる体制を構築すべきといえます。

  以下の記事も参考にして見て下さい。

 フランチャイズ契約の法律トラブル

 

 

建物明渡し事案の解決事例

2022-08-24

1 事案内容

  依頼者はマンションのオーナーですが、ある部屋の借主が1年近くも賃料を滞納しており、その部屋には借主ではない人物も複数出入りしており、管理会社も借主と連絡が取れないことから、対応方法に困り相談に来られました。

2 事案の分析及び解決方法

  依頼者から事実関係を確認すると、借主本人とはほとんど連絡が取れない状況であり、借主でない人物から依頼者や管理会社へ連絡がある状況であり、さらには借主ではない複数の人物が部屋に出入りしているということでした。

  そのため、借主へ内容証明郵便を送付し、期限を設定した上、滞納賃料の支払いがなければ賃貸借契約を解除する内容証明郵便を送りましたが、借主は受け取らずに返送されてきました。そのため借主の部屋に投函されたとの記録を残すため、特定記録郵便で送達しました。当然のことながら、期限までに滞納賃料の振込みもなく、訴訟を提起することにしました。

  しかし、今回のケースでは、借主でない人物の出入りが複数確認されていたため、実際に部屋に居住している人物が借主でない可能性も考えられたので、明渡訴訟を行う前に占有移転禁止の仮処分を行ないました。

  占有移転禁止の仮処分を行っておくことで、明渡訴訟の途中で占有者が変わっても、新たな占有者に対しても強制執行により明け渡しが可能となります。

  その後、明渡訴訟を提起した上で判決を取得しましたが、借主は任意に退去することはなく、最終的には強制執行を行いました。

3 まとめ

  本件は借主が任意に退去しなかったので、建物明渡にかかる手続(仮処分-訴訟-強制執行)をすべて行いました(建物明渡請求の流れ)。借主が居直って、任意に明け渡しない場合、賃貸人が実力行使して借主を追い出すと、逆に借主から損害賠償を請求されてしまう可能性がでてきてしまいます。一刻も早く退去してもらいたい賃貸人の気持ちもわかりますが、実力行使をしてしまうと元も子もありません(家賃滞納者に対して行ってはいけないこと)。

  借主が家賃滞納して早急に退去してもらいたい場合は、弁護士に相談することをお勧めします。実際には、本件のように強制執行まで行うケースはあまりなく、それ以前の段階で任意に退去することがほとんどです。

 そこで、借主が家賃を滞納しており明渡しを求めたい場合、是非アーツ綜合法律事務所へご相談下さい。

民事信託の可能性について

2022-08-19

1 信託とは

       信託とは、日常生活ではあまりなじみのない言葉ですが、文字どおり財産を信じて託すことを言います。法律的には、ある人が信用できる親族や第三者に対して、不動産や金銭などの財産を託し、その親族や第三者がその財産を管理することを言います。財産を託す人を委託者といい、財産を託されて管理する人を受託者といいます。さらに、信託法では信託関係の中で利益を受ける受益者も登場してきます。

  このように信託では、主に委託者、受託者、受益者の三者が登場することになります。

  委託者が受益者を兼ねる信託を自益信託といい、委託者と受益者が異なる場合を他益信託といいます。信託行為は、委託者と受託者との契約により行われる場合、委託者が遺言により行う場合、委託者が信託宣言という方法で行う場合があります。

  では、信託を利用することによって、利用者にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。信託は様々な場面で利用でき、とても便利な制度なのですが、いくつかの事例で説明いたします。

2 高齢者の財産保護のための利用事例

        高齢になってくると判断能力が衰え、自らの財産を管理できなくなる場合がしばしばあります。この場合に成年後見制度を利用し、成年後見人を選任することも考えられますが、同制度を利用すると、高齢者にとって不利益になることはできなくなりますので、相続対策などの財産運用や自宅を売却して老人ホームに入るなどの行為ができなくなる可能性があります。

  そこで、民事信託を利用して、自分の子どもや他の信頼できる親族に財産管理を委託して、高齢者自らが受益者になっておけば、判断能力が衰えたとしても、受託者が財産を管理し必要な場合は処分することもでき、また委託者である高齢者は必要な生活費を受給できるので財産は守られることになります。

  なお、民事信託を利用すると、受託者に所有権は移転しますが、受託者の個別財産とは別に管理することが義務付けられており、信託から生じる利益は受益者が得られるので、実際には不都合は生じることはありません。

3 夫婦間に子どもがいない場合の利用事例

  夫の財産として居住不動産がある場合、夫が死亡後は妻及び妻の兄弟姉妹が相続することになるので、夫が妻に相続させるという遺言書を作成すること方法も考えられますが、その後、妻が亡くなれば妻の兄弟姉妹が相続することになります。夫がこの不動産について妻死亡後は夫の親族に残したいと考えている場合は信託を利用することが一つの解決策となります。

  この場合、夫が委託者として、受託者を最終的に譲渡したい夫の親族にしておき、受益者を夫、夫死亡後は妻としておき、帰属権利者を夫の親族とする信託契約をすることになります。

  このような信託を行うことで、夫死亡後は妻が従前どおり不動産に居住し続けることができ、妻死亡後は夫の親族が不動産を取得することができます。

  上記利用事例はわかりやすくするために簡単な事例にしておりますが、民事信託はさまざまな場面において利用することができる制度になっております。

  民事信託については、委託者及び受託者との間で信託契約書をきちんと作成しておく必要がありますので、弁護士のなどの専門家に相談することをお勧めいたします。

  法律のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

離婚に伴う財産分与により生じる課税関係について

2022-06-27

1 離婚の際に財産分与する者に税金がかかる場合があること

  離婚する場合、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を分与しますが、通常は、夫から妻に財産を分与することになります。分与対象となる財産には、現預金、不動産、保険、自動車などの動産などが主なものになります。

  通常、離婚する夫婦は、夫から妻もしくは妻から夫に財産の半分を渡せば、財産分与としては終了するので、税金については全く考えていないではないでしょうか。

  しかしながら、離婚する場合、分与する側に譲渡所得税がかかることがあります。分与される側の間違いではないかと思われるのですが、分与する側に税金がかかる場合があるのです。特に分与財産の中に不動産があり、購入後に資産価値が上がっている場合は注意が必要となります。なお、分与される側については贈与税がかかるのではないかと思われるのですが、財産分与は贈与ではありませんので、離婚自体が贈与税や相続税を免れるために行われる場合などの例外的事情がない限り、原則として贈与税が課されることはありません。

 分与する側に譲渡所得税がかかることにつき、判例がありますので以下紹介いたします。

2 判例について

 事案は協議離婚に伴う財産分与として夫が妻に不動産全部を譲渡したところ、後日、夫が自分に億単位の譲渡所得税が課税されることを知って、妻への財産分与の錯誤無効を主張した事案となります。本件事案では、夫は自分に対して譲渡所得税が課税されることを知りませんでした。

 事案は協議離婚に伴う財産分与として夫が妻に不動産全部を譲渡したところ、後日、夫が自分に億単位の譲渡所得税が課税されることを知って、妻への財産分与の錯誤無効を主張した事案となります。本件事案では、夫は自分に対して譲渡所得税が課税されることを知りませんでした。

 当該事案は最高裁まで争われ、最高裁平成1年9月14日判決では、「離婚に伴う財産分与として夫婦の一方が、その特有財産である不動産を他方に譲渡した場合には、分与者に譲渡所得を生じたものとして課税されることになる。したがって、前示事実関係からすると、本件財産分与契約の際、少なくとも上告人において、右の点を誤解していたものというほかないが、上告人は、その際、財産分与を受ける被上告人に課税されることを心配してこれを気遣う発言をしたというのであり、記録によれば、被上告人も、自己に課税されるものと理解していたことが窺われる。そうとすれば、上告人において、右財産分与に伴う課税の点を重視していたのみならず、他に特段の事情のない限り、自己に課税されないことを当然の前提とし、かつ、その旨を黙示的には表示していたものといわざるを得ない。」と認定して、分与者である夫(上告人)の錯誤無効の主張を認めました。

3 譲渡所得税が生じることは多くない

  離婚に伴う財産分与において、分与する側に税金がかかる場合があることを説明してきましたが、分与財産である不動産が人気の居住地区にあるなど、購入時点に比べて資産価値が上がっている場所でない限り、実際には譲渡所得税が生じることはほとんどありません。つまり、通常、不動産は購入時点の価値が最も高く、財産分与時点ではかなり下がっていることが多いため、財産分与時点では譲渡損(離婚時点の価値<購入時点の価値)になっていることから譲渡所得税が生じることはほとんどありません。

  もっとも、不動産が文教地区にある場合や繁華街や駅が近いなど、購入以降も価値が上がる要素があれば、譲渡所得税が生じる可能性がありますので、専門家に相談することをお勧めいたします。

  法律相談のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

賃貸借契約における賃貸人の連帯保証人に対する請求が制限される場合について

2022-01-20

1 賃貸借契約における連帯保証人の責任

     マンションやビルなどの一室を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結しますが、通常、賃借人は賃貸人から連帯保証人を求められます。連帯保証人は、賃借人とともに賃貸借契約から生じる賃借人の債務を負担することになります。例えば、賃借人が家賃を滞納していれば、滞納家賃を支払わなければならないですし、賃借人が物件を破損したりした場合は補修すべき責任を負わなければなりません。このように連帯保証人は責任が重くなる場合があるため、通常は親族になってもらうことが多いと思われます。

2 連帯保証人の負担義務の範囲が問題となった事例

    賃借人が家賃を滞納してからかなりの期間が経過しているにもかかわらず、賃貸人が即座に明け渡しを求めることがなく、滞納家賃が多額になってから連帯保証人に請求してくることがあります。連帯保証人とすれば賃貸人から請求を受けて初めて滞納家賃が多額になっていることを知ることになります。このような場合、連帯保証人は賃貸人から請求された金額すべてを支払わなければならないのでしょうか。原則的には連帯保証人は全額支払う必要がありますが、一定の条件が認められれば、連帯保証人は全額を支払う必要はありません。

 この点については区営住宅の賃貸借契約において、賃貸人が滞納家賃を連帯保証人に請求した事案において、連帯保証人への請求を制限した事例(東京高裁平成25年4月24日判決)があります。

    この事案では、賃借人が賃料不払いを続けながら、賃貸建物を明け渡さない場合、賃貸人は、保証人の支払債務が保証契約上想定されるよりも著しく拡大することを防止するために、保証人との関係で解除権等を状況に応じて的確に行使すべき信義則上の義務を負うとされ、賃貸人が権利行使を著しく遅滞したときは、著しい遅滞状態となった時点以降の賃料ないし賃料相当損害金を保証人に請求することは権利濫用として許されないと判断されております。

  実際には賃貸人がどの程度の期間、権利行使を放置すれば保証人への請求が権利濫用となるのかはケースバイケースなのですが、およその目安として2,3年と解されます。もっとも通常、期間のみならず、他の事情も考慮されて判断されます。

3 改正民法の規定について

    このようなトラブルが多かったことから、2020年に改正された民法では、親族や知人などの個人が賃借人の保証人となる場合には、知らぬ間に滞納賃料が増大することを防ぐために、賃貸借契約において保証人が負担しなければならない最大限度の負担額(極度額)を定めておかなければならなくなりました(民法465条の2)。

 改正された民法により、今後は前述したようなトラブルは減少すると解されますが、2020年4月1日以前に締結された賃貸借契約については、改正民法が適用されないので先ほどのトラブルが生じる可能性があります。

 不動産のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

解雇処分をされた事案の解決事例②

2021-09-19

1 事案内容

 依頼者は勤務している会社から勤務態度不良等を理由として、いきなり解雇されてしまいました。依頼者は解雇予告手当ももらっておらず、また次の就業先も決まっていないため、途方にくれて当事務所へ相談に来られました。

2 事案の分析及び解決方法

 依頼者から事実関係を確認すると、会社が主張する勤務態度不良等の内容が全く事実と異なっており、会社が主張する内容が仮に事実であったとしても解雇の要件を充たしているものとは到底解せないものでした(不当解雇されそう・された方へ)。

 また、依頼者が勤務していた会社は外国法人であり、雇用契約上は会社の現地法が適用されるとの契約内容になっておりました。そして現地法では、労働者に対する解雇は自由に行うことが可能であり、解雇予告手当の支払も必要がないものでした。

 しかし、依頼者は外国法人と雇用契約を結んでいるものの、日本国内で勤務していたため、法の適用に関する通則法12条(注)によれば、解雇権の行使については日本法が適用される事案でした。

 そこで、会社に対していきなり訴訟や労働審判を申立てるのではなく、まずは交渉を試みました。当方は解雇に関する本件事案では日本法が適用されるため会社の解雇手続には理由がなく解雇は無効であることを主張しました。

 しばらくは会社の担当者とやりとりを続けていましたが、最終的に会社は解雇処分を撤回し、依頼者の給料の4ヶ月分近くの解決金を支払い、依頼者は退職することで合意が成立しました。

 (注) 法の適用に関する通則法12条

  1 労働契約の成立及び効力について第7条又は第9条の規定による選択又は変更により適用すべき法が当該労  働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行法規を適用すべき旨の意思表示を使用者に対し表示したときは、当該労働契約の成立効力に関しその強行法規の定める事項については、その強行法規をも適用する。

3 まとめ

 本件は訴訟や労働審判を申し立てることなく、交渉でまとめることができたため、依頼を受けてから2ヶ月程で解決に至りました。

 勤務する会社から退職を求められたり、解雇されたりすると、従業員としてはどのように対処してよいのかわからず、自ら会社と交渉していくのは過度な負担となり困難と思われます。

 そこで、退職勧奨や解雇処分を受けてお困りの場合は、是非アーツ綜合法律事務所へご相談下さい。

 

賃貸人が通常の電気料金に様々な諸経費を加算して賃借人に請求することの可否

2021-06-23

1 マンションやビルでの電気料金などの光熱費の請求

       マンションやビルなどの一室を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結しますが、一戸建てや家族用マンションであれば、通常、賃借人が電気、ガス、水道などの光熱費の料金は電力会社やガス会社と直接供給契約を結びますので、基本料金及び毎月の使用料は、自分たちが使用した分について請求されることになります。

これに対して、商業ビルでは様々な業態の個人や法人が賃借人となっていることもあり、賃貸人から毎月の賃料に電気料金や水道料金が加算された請求書にもとづいて支払っている場合がよくあります。賃借人の多くがこれらの光熱費についてほとんど疑問を持つことなく、請求されるままに支払っているのではないでしょうか。

2 賃借人が負担すべき電気料金が問題となった事例

     賃貸人が未払の電気料金を請求し、賃借人が電気料金の払い過ぎを主張して裁判になった事例(東京地裁平成27年2月27日判決)があります。

 事案は、ビルオーナーである賃貸人が、賃借人に対して電気料金を2年間滞納しているとして訴訟を提起したのですが、賃借人の方でも、賃貸人から電気料金を過大に請求されて払ってきたとして、過大に請求された金額の返還を求めて反訴を提起しました。

  この事案では、賃貸人が、実際に賃借人が使用した電気料金に加えて、ビルの管理料や人件費、金利リスクなどを考慮して毎月の電気料金を請求しており、このような請求が認められるかが争点となりました。

  結論としては、賃貸人と賃借人の間で、電気料金などの課金方法や計算方法などの取り決めがなされたこともなく、賃貸借契約書にも課金方法や計算方法の記載もなかったことから、賃貸人が通常の電気料金に管理料など様々な諸経費を加算して請求することは認められませんでした。一方で賃貸人に対し、賃借人が過大に支払った電気料金を返還するよう認めております。

3 賃貸借契約における電気料金や水道料金などの定め方

      賃貸人としては、賃借人に対し、電気料金や水道料金などの光熱費を請求するにあたり、通常の使用量に諸経費を加算するのであれば、賃貸借契約時点で賃借人に対して、課金方法や計算方法を説明した上で賃貸借契約書にも明記しておく必要があるでしょう。

 もっとも、諸経費を加算するとしても、あらゆる経費を電気料金などに上乗せすることは認められるとは解されず、関連機器の保守管理費など合理的な範囲に限定されることになります。上記裁判例でも電気料金に加算される費用としては関連機器の保守管理費のみが認められております。

  賃借人としては、賃貸人からの電気料金や水道料金の請求額がどのように計算されているのか一度確認した方がいいでしょう。

    不動産のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

 

 

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