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1 事案内容
相続人間の感情的な対立が著しく被相続人である父の遺産を管理していた他の相続人が遺産の開示に応じない上、多額の使途不明金が発覚した事例で、遺産の範囲及び多額の使途不明金の使途を明らかにさせた上で遺産の額に組入れ、話合いで解決した事例
2 解決方法
まず、依頼者が把握している父の遺産(預金)について過去の取引履歴の確認を行ったところ、預金残高がほぼなく不自然な多額の出金が認められました。また、遺産管理者である相続人に対しては遺産の範囲及び状況の開示を求める交渉から始めたところ、遺言があること、父から依頼者への生前贈与(特別受益)があること、父の療養看護等を行ってきたなどの主張がなされました。そのため、公正証書遺言の内容の確認を行うとともに、遺言書作成時期、使途不明金の出金時期等の状況を確認するべく医療機関からカルテ等を取り寄せた上で検討を行いました。さらに、遺言執行者や相続人の代理人と交渉し、遺産の範囲を開示させた上、全ての遺産につき使途不明金を調査し特定した上で、その使途につき説明及び証拠の提出をさせ、さらに遺産の額に組入れるべく交渉を重ねました。最終的には、法的手続をとることなく、遺産の範囲を適切に増やし、多額の使途不明金につき説明及び証拠を提出させた上でその使途を明らかにさせ、多額の使途不明金を遺産の額に組入れた上で分割協議を成立させました。
3 苦労した点
本件では、相続人間の感情的な対立が著しい上、遺産の開示が円滑に行われなかったのみならず、過去に遡って多額の使途不明金の説明及び証拠の提出をさせてその使途を明らかにさせることは通常相当の困難を伴いますが、上記事情より一層の困難を極めたこと、さらには遺産の大半を多額の使途不明金が占めていたため現存する遺産が少なく、多額の使途不明金を遺産に組入れさせることに相当の尽力を要したことなどがあり苦労しました。しかし、根気よく丁寧に交渉を重ねていった結果、最終的には法的手続をとることなく、多額の使途不明金を遺産の額に組入れた上で分割協議を成立させることができました。