離婚に伴う財産分与により生じる課税関係について

1 離婚の際に財産分与する者に税金がかかる場合があること

  離婚する場合、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を分与しますが、通常は、夫から妻に財産を分与することになります。分与対象となる財産には、現預金、不動産、保険、自動車などの動産などが主なものになります。

  通常、離婚する夫婦は、夫から妻もしくは妻から夫に財産の半分を渡せば、財産分与としては終了するので、税金については全く考えていないではないでしょうか。

  しかしながら、離婚する場合、分与する側に譲渡所得税がかかることがあります。分与される側の間違いではないかと思われるのですが、分与する側に税金がかかる場合があるのです。特に分与財産の中に不動産があり、購入後に資産価値が上がっている場合は注意が必要となります。なお、分与される側については贈与税がかかるのではないかと思われるのですが、財産分与は贈与ではありませんので、離婚自体が贈与税や相続税を免れるために行われる場合などの例外的事情がない限り、原則として贈与税が課されることはありません。

 分与する側に譲渡所得税がかかることにつき、判例がありますので以下紹介いたします。

2 判例について

 事案は協議離婚に伴う財産分与として夫が妻に不動産全部を譲渡したところ、後日、夫が自分に億単位の譲渡所得税が課税されることを知って、妻への財産分与の錯誤無効を主張した事案となります。本件事案では、夫は自分に対して譲渡所得税が課税されることを知りませんでした。

 事案は協議離婚に伴う財産分与として夫が妻に不動産全部を譲渡したところ、後日、夫が自分に億単位の譲渡所得税が課税されることを知って、妻への財産分与の錯誤無効を主張した事案となります。本件事案では、夫は自分に対して譲渡所得税が課税されることを知りませんでした。

 当該事案は最高裁まで争われ、最高裁平成1年9月14日判決では、「離婚に伴う財産分与として夫婦の一方が、その特有財産である不動産を他方に譲渡した場合には、分与者に譲渡所得を生じたものとして課税されることになる。したがって、前示事実関係からすると、本件財産分与契約の際、少なくとも上告人において、右の点を誤解していたものというほかないが、上告人は、その際、財産分与を受ける被上告人に課税されることを心配してこれを気遣う発言をしたというのであり、記録によれば、被上告人も、自己に課税されるものと理解していたことが窺われる。そうとすれば、上告人において、右財産分与に伴う課税の点を重視していたのみならず、他に特段の事情のない限り、自己に課税されないことを当然の前提とし、かつ、その旨を黙示的には表示していたものといわざるを得ない。」と認定して、分与者である夫(上告人)の錯誤無効の主張を認めました。

3 譲渡所得税が生じることは多くない

  離婚に伴う財産分与において、分与する側に税金がかかる場合があることを説明してきましたが、分与財産である不動産が人気の居住地区にあるなど、購入時点に比べて資産価値が上がっている場所でない限り、実際には譲渡所得税が生じることはほとんどありません。つまり、通常、不動産は購入時点の価値が最も高く、財産分与時点ではかなり下がっていることが多いため、財産分与時点では譲渡損(離婚時点の価値<購入時点の価値)になっていることから譲渡所得税が生じることはほとんどありません。

  もっとも、不動産が文教地区にある場合や繁華街や駅が近いなど、購入以降も価値が上がる要素があれば、譲渡所得税が生じる可能性がありますので、専門家に相談することをお勧めいたします。

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