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個人破産制度における免責不許可事由と非免責債権について

2020-08-06

1 破産制度とは

  破産制度の目的とは、債権者、債務者及び利害関係人の権利関係を調整し、債務者の財産を公平に精算し、債務者の経済生活の再生の機会を確保することにあります。この内容が破産法1条に記載されております。

  破産手続を利用する債務者にとっては主に経済生活の再生を図ることにあります。経済生活の再生を図るとは、債務者が裁判所から免責許可決定を得ることにより、負債(借金)がすべて免責されるということを意味します。つまり簡単にいうと債権者に対して返済しなくてもよくなります。しかしながら、破産手続を利用しても負債が免責されない免責不許可事由と免責の効力が及ばない非免責債権が規定されています。

2 免責不許可事由とは

  免責不許可事由とは、破産手続を利用する債務者の行為を原因として、負債(借金)の免責を認めないとするものです。免責不許可事由は破産法252条1項に記載されています。主な免責不許可事由には以下のものがあります。

 (1)不当に財産を減少させる行為

 債権者への支払いが不能となった後に本来であれば清算対象となる財産を債務者が勝手に使用したり、処分したりする場合です。

 (2)不当に債務を負担し、不利益な処分行為

 債権者への支払いが不能となった後、著しく不利益な条件で債務を負担したり、信用取引で商品を買い入れ著 しく不利益な条件で処分する場合です。典型的にはクレジットカードで購入した商品をすぐに廉価で換金する行為が該当します。

 (3)不当に特定の債権者のみに返済する行為

 既に支払不能になっているにもかかわらず、特定の債権者のみに返済したり担保の設定をしたりする場合をいいます。

 (4)浪費や賭博などによる財産減少行為

 自らの生活レベル以上に財産を散財したり、競馬やパチンコなどのギャンブルなどで借金が増大した場合をいいます。

 (5)詐術による信用取引

 破産手続開始申立前開始1年前の日から破産手続開始申立までの間に支払い不能にありながら、住所、氏名、生年月日や負債額などの信用状態を偽り、借金や信用取引をする場合をいいます。

  これらの免責不許可事由があると、免責が認められず負債が残ったままになるのかと疑問に思われれるかもしれませんが、多くの場合は裁量的に免責が認められております。免責不許可事由がある場合でも、弁護士に話していただき、破産申立の際に正直に記載することが重要となってきます。

3 非免責債権とは

  破産手続を利用し、最終的に裁判所から免責許可決定が得られると原則として負債(借金)の返済義務がなくなります。しかしながら、一部の負債については免責の効果が及びません。このような免責の効果が及ばない負債を非免責債権と言います。非免責債権について破産法253条1項に記載があります。具体的には、➀税金、➁破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、③破産者が故意、重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、➃養育費や婚姻費用、⑤雇用関係に基づいた使用人の請求権、⑥破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権、⑦罰金等の請求があります。

4非免責債権に関する裁判例

 上記3➁については、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するのかどうか争われた裁判例(東京地裁平成28年3月11日判決)があります。事案は、原告が、被告に対し、被告の原告夫との不貞行為を理由としての慰謝料を請求したものとなります。被告は訴訟係属中に破産開始決定を受けるとともに免責許可決定を得たところ、原告は、被告の行為は悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するので非免責債権であると主張しました。原告の慰謝料請求権が非免責債権であるとすれば、被告が免責許可決定を得ていたとしても、原告に対して慰謝料を支払わなければなりません。

 裁判例では、「悪意」とは「故意を超えた積極的な害意」であるとし、本件では被告の原告夫との不貞行為の態様や不貞発覚直後の原告に対する対応などから、被告の不法行為の違法性は低いとはいえないしながらも、原告夫の行為を考慮した上で、被告が一方的に原告夫を篭絡して原告の家庭の平穏を侵害する意図があったとまでは認定できず、被告には原告に対する積極的な害意があったということはできないとしました。結論として原告の慰謝料請求権は非免責債権に該当しないとされ、被告は慰謝料の支払義務を免れました。

 もっとも、本裁判例のように不貞行為に基づく慰謝料請求権がすべて非免責債権に該当しないというものではなく、個別具体的事情によれば非免責債権に該当することになります。

 破産手続において免責不許可事由に該当するのではないかや非免責債権に該当するのではないかなどのお悩みや疑問がある方は初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

 

 

 

 

 

改正民法-賃貸借契約への影響➁

2020-03-03

 令和2年4月1日に改正民法が施行され、賃貸借契約にも大きな影響を及ぼします。賃貸借契約の連帯保証人になる場合、連帯保証人が負担する最大限度額を取り決める必要があり、保証人が負担する最大限度額を極度額と言います。その取り決めがなければ保証契約は無効となります。その点は前回のコラムで記載しているとおりです。

1個人根保証契約の元本確定事由

 改正民法では、賃貸借契約の終了をまたずに保証人の負担額が確定する事情を新たに規定しております(民法465条の4第1項)。法律用語では、保証人の負担額が確定することを「元本の確定事由」といいます。「元本の確定事由」は以下のとおりとなっております。

  1. 保証人の財産に強制執行等がなされた場合

  2. 保証人が破産した場合

  3. 賃借人または保証人が死亡したとき

 上記の元本確定事由が発生した場合、保証人は上記事情が発生した時点までの債務を支払う責任が生じます。例えば賃借人が死亡した場合、保証人は賃借人が死亡した時点までの賃料等の支払義務を負います。死亡時点以降に生じた賃料等の債務については責任を負う必要はありません。

2保証すべき対象債務について

 注意すべきは保証人が保証すべき対象債務は賃料に限られるものではないということです。確かに保証すべき債務の多くが賃料であることは間違いないでしょうが、保証人は賃借人が賃貸人に対して負う可能性がある債務についてはすべて責任を負わなければなりません。例えば、原状回復費用や放置物の撤去費用などについても元本が確定するまでに発生していた場合、保証人は責任を負わなければなりません。

 もっとも、賃貸借契約時に保証人の極度額を80万円としていた場合、元本確定時点の滞納家賃や原状回復費用などを合わせると80万円を超える場合でもあっても、保証人は80万円を超えて責任を負担する必要はありません。

改正民法-賃貸借契約への影響①

2020-03-02

1 改正民法-個人根保証契約の保証人の責任

  今般、民法が改正され、令和2年4月1日から施行されます。民法改正により賃貸借契約ついても大きな影響を受けることになります。重要なものとしては賃借人の連帯保証人の責任が限定される点が挙げられます。通常、賃貸借契約を締結する場合、賃貸人から連帯保証人を求められ、賃借人は通常、親族や知人に連帯保証人になってもらいます。この場合、賃借人が家賃を滞納すると連帯保証人が代わって支払うことになります。しかし、賃借人の滞納額が1年や2年にも及んだ場合、保証人が予想外に多額の支払いをすることになってしまいます。これまでにこのような事例が多かったために、改正民法により保証人が負担する金額の最大限度額を取り決めすることにより保証人を保護することしました。保証人が負担する最大限度額を「極度額」といい、改正民法では個人根保証契約の保証人の責任(民法465条の2)として規定されております。

2 極度額の定め方について

  改正民法によれば個人根保証契約において保証人が負担する最大限度額を定めておかなければ契約が無効となります(465条の2第2項)。つまり、賃貸借契約において保証人が負担する最大限度額(極度額)を取り決めておかなければ、保証契約は無効となります。極度額の定め方ですが、「80万円」や「100万円」などと具体的な金額を設定する方法でも、「賃料1年分」とする定め方でもかまいません。もっとも後者の場合、更新時に賃料が増額され保証人の極度額も増額するのであれば保証人を保護する趣旨に反することになり、無効とされる可能性がありますので、「賃貸借契約締結時の賃料1年分」としておくのが妥当と解されます。

3 具体例

  例えば、賃借人の家賃の滞納額が100万円、保証人が負担する最大限度額(極度額)が80万円の場合、保証人は80万円を賃貸人へ支払えば、それ以上負担する必要はありません。また、保証人がそれまでに賃貸人へ20万円支払っていた場合、残り60万円を支払えばよいことになります。

  

 

フランチャイズ訴訟雑感

2019-11-14

 これまでにフランチャイズ本部や加盟店から多くの相談を受けてきましたが、フランチャイズ事業もコンビニだけでなく実に様々な事業があります。中にはフランチャイズ事業として成り立つのか疑問に思うものもあります。

 相談を受ける中でいくつかの訴訟を手掛けてきましたが、本部や加盟店のいずれの立場であっても訴訟で争うことは双方にとって「労多くして益少なし」という印象が拭えません。フランチャイズの場合、契約前に本部が提示した収益予測と加盟店が実際に開業した時の売上が大きく異なることから当初の説明と違うということで訴訟になるケースがほとんどです。

 訴訟になると加盟店に本部の説明義務違反を立証する必要があるのですが、立証に成功して本部の説明義務違反が認められたとしても、損害を算定する段階で裁判所は加盟店も独立の事業者であるとかフランチャイズ事業を精査せずに安易に意思決定をしたなどの理由により過失相殺がなされてしまうので、認定される損害額がかなり減額されてしまいます。このように本部にとっては損害賠償責任が認められると事業の見直しを迫られるでしょうし、加盟店にとっては実際に被った損害額よりも低い額しか認められないことが多いといえます。

 このような訴訟実態を考えると、フランチャイズ事業に加盟することを検討されている方は、検討している事業につき複数社からの説明を受けるとともに、自らも事業内容を納得するまで徹底的に検討し疑問があれば解消しておく必要があります。やはり安易に意思決定をしないことが重要といえます。一方、本部についても本部だけの利益追求の事業を構築するのではなく、本部・加盟店の双方が共存できる体制を構築すべきといえます。

 

 

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