Archive for the ‘コラム’ Category

節税のための養子縁組について

2020-11-25

1 養子縁組の要件について

  養子とは親子関係を出生という血のつながりではなく、当事者の意思により生じさせる制度を言います。養子が成立するためには、形式的要件としては届出が必要ですが、実質的要件として縁組をする意思が必要となります(民法802条)。そして、養子縁組により親子関係が成立すると、養親が亡くなった場合、当然のことですが養子も相続人となります。

2 養子がいる場合の相続税の基礎控除額について

  相続が発生した場合、遺産が多いと相続税を納めなければなりませんが、相続税の計算に当たり基礎控除が認められており、現行法では、3000万円に加えて600万円に相続人の数を乗じた合計金額の控除が認められております(相続税法15条1項)。例えば、相続人が3名の場合、基礎控除額は4800万円(=3000万円+600万円×3人)となります。

 そうすると、遺産の多い人は、生前に自分の孫などを養子とすれば基礎控除額が増えることになりますので、節税のため養子縁組をして養子を増やそうとする人も出てくるかもしれません。しかしながら、この点については、相続税法上、被相続人に実子がいる場合は、相続税の計算上、相続人として数えられる養子は1人であり、被相続人に実子がいない場合には相続人として数えられる養子は2人となっております(相続税法15条2項)。つまり、相続税法上は、無制限に養子縁組をして養子を増やしても、基礎控除額として算入される養子を制限しております。

3 節税のための養子縁組は認められるのかどうかについて

  では、そもそも節税のために養子縁組をした場合、果たして当事者間に縁組意思が認められるのでしょうか。

  この点について、判例(最高裁平成29年1月31日・民集第71巻1号48頁)は「相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」と認定しております。つまり、節税目的があったとしても、養親子関係を生じさせる意思が併存している場合は養子縁組を行う意思はあるとしました。当然のことながら、単に節税のためだけに養子縁組を仮装した場合は養子縁組の意思は否定されることになります。

 もっとも、注意すべきことは、節税目的のための養子縁組につき縁組意思が否定されなかったとしても、実際に基礎控除額が増えるかどうかは相続税法の規定によることになります。つまり、相続税を不当に減少させる場合には、養子を基礎控除額の算定の相続人入れることができなくなりますので(相続税法63条)、専ら節税目的のために養子縁組を行うことは止めた方が良いと言えます。

 

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相続放棄と空家の管理責任について

2020-11-09

1相続放棄者の義務

 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄をすることができます(民法915条1項・相続放棄をしたい方へ)。相続を放棄すれば初めから相続人とならなったものとみなされます(民法939条)。相続放棄が実際になされるのは、遺産に借金が多い場合、不動産などの資産があっても価値がない場合、相続争いに巻き込まれたくない場合などです。

 ただ、相続放棄をしても遺産に不動産、預金通帳や動産がある場合、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」(民法940条1項)と規定されており、放棄した相続人には管理責任が課されております。通常であれば、第1順位の相続人である子が放棄した場合、その子が第2順位の両親や第3順位の兄弟姉妹の相続人に遺産を引き渡すまで管理責任が継続することになります。

 では、第1順位である子の他に第2順位や第3順位の相続人がいない場合に、第1順位の子が相続放棄した場合、その子は遺産について管理責任を負担し続ける必要があるのでしょうか。

 このような場合、最後の相続放棄者である子は遺産の管理責任を負い続ける必要があります。遺産の管理責任を免れるためには、相続放棄者が利害関係人として家庭裁判所へ相続財産管理人の選任の申立てる必要があります(民法952条)。もっとも、相続財産管理人の選任申立にあたっては、少なくない額の予納金を納めなければならず、この点が、相続財産管理人の選任を申し立てることを躊躇する原因となっています。

2相続放棄した遺産が空家である場合の問題

(1) 近隣住民等に対して生じる責任

  遺産のうちに空家がある場合、前述しましたように相続放棄した者が最終放棄者である場合、遺産の管理責 任が継続することになります。このような状況において空家で火事が生じ近隣の建物に被害を被らせた場合や空家の瓦が落ちて近隣の建物に被害を与えた場合などは、相続放棄者が管理責任に基づく損害賠償責任を問われる可能性があります。相続を放棄したからという理由で、責任を免れることはできないといわなければなりません。

 相続放棄者が管理責任を免れるには、前述しましたように相続財産管理人を選任して、空家を除却したり、売却するなどして処分してもらう必要があります。

(2) 行政に対して生じる責任

  平成27年に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、「空家法」といいます。)が制定され、行政も増え続ける空家対策に乗り出しております。

  空家法で規定された施策のポイントは、行政において特定空家を認定し、特定空家の所有者や管理者に対し、除却、修繕などの周辺環境の保全を図るために必要な措置を助言、指導、勧告、命令することができます。

  特定空家とは放置すれば倒壊の危険がある状態や衛生上有害となるおそれのある状態など、周辺の生活環境の保全を図るため放置することが不適切である状態の空家のことをいいます(空家法2条2項)。

  所有者が行政の命令措置に従わなかった場合、行政が行政代執行法により除却などを行い、それに要した費用について所有者に対して納付命令を行います。

  では、最後の相続放棄者は、倒壊等の危険がある空家に対して、行政から助言、指導、勧告、命令を受ける対象となるのでしょうか。つまり、放棄者自らの費用で除却する必要があるのでしょうか。最後の放棄者が放棄後も管理責任を負うとされていることから問題となります。

  この点、管理責任を負う最後の放棄者についても空家法3条の適切な管理を行う努力義務を負いますが、前述した空家法14条の命令を受ける対象とはなりません。つまり、最後の相続放棄者は放棄した空家につき倒壊の危険があっても、行政の命令を受ける立場にはなく(但し、行政から助言、指導、勧告を受ける名宛人とはなります。)、最後の放棄者は自らの費用で除却する必要はなく、仮に行政が代執行に基づき建物を除却した場合でも、除却にかかった費用を納付する義務もありません。

 

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相続分の譲渡が贈与に該当する場合について

2020-10-29

1 相続分の譲渡とは

 父母の一方が亡くなり相続が開始した場合、残された配偶者や子どもたちなどの相続人の間で遺産分割協議が行われます。しかし、相続人の中には遺産は要らないので、遺産分割協議には参加したくないと考える者もいます。このような相続人が取りうる方法としては、相続放棄(民法939条・相続放棄をしたい方へ)と相続分の譲渡があります。

 相続放棄とは、相続人が家庭裁判所に申し立てることによって相続を放棄する制度であり、放棄を申し立てて裁判所に受理されると、その相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされます。一方、相続分の譲渡とは相続人の一人が、他の相続人や第三者に自らの相続分を譲渡することを言います。相続分の譲渡を定めた規定は民法上ありませんが、一般的に認められた手続です。また相続分の譲渡を前提とした規定が民法にはあります。相続分の譲渡は相続放棄と異なり、裁判所へ申し立てる必要はなく、譲渡当事者間で行うことができるので、よく利用されております。

 相続分の譲渡が行われた場合、譲渡を認めたくない他の相続人は何らかの主張ができないのでしょうか。

 まず、相続分の譲渡が第三者になされた場合には、譲渡人ではない他の相続人は譲渡された相続分の価額を支払った上で、自らがその相続分を譲り受けることができます(民法905条)。しかし、相続人間で相続分の譲渡が行われた場合、他の相続人は譲渡行為を阻止することはできません。

 このように相続分譲渡がなされると、相続分を譲渡した相続人は、相続人ではなくなるので遺産分割協議に参加する必要がなくなり、相続分を譲り受けた相続人は、自らが取得する相続分が増えることになります。また、相続分を譲り受けたのが第三者であれば、第三者が他の相続人との遺産分割協議に加わることになります。

 2 相続分譲渡が贈与に該当する場合について

 相続分譲渡を受けた相続人は、被相続人が残した遺産からの取得分が増えるわけですが、他の相続人は相続分譲渡につき何らかの主張ができることがあるのでしょうか。

 この点についての判例(最高裁平成30年10月19日判決・民集72巻5号900頁)があります。事案を簡略化しますと、まず父親の遺産相続の際に、二男が母親から相続分の譲渡を受けて、長女を含む他の相続人とともに遺産分割協議を成立させました。次に母親が亡くなり相続が開始した際に、父親死亡時に母親から相続分譲渡を受けた二男に対して、長女が相続分譲渡を受けた点について遺留分を侵害しているとして主張したのです。争点は、遺留分算定(遺留分侵害額の計算)にあたり、相続分譲渡が贈与として算定の基礎財産にあたるのかが問題となりました。

 上記判例は、「共同相続人間においてなされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産に価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する贈与に当たる。」と認定し、相続人間の無償による譲渡が贈与にあたることを認めております。つまり、相続分譲渡を行った譲渡人が死亡し新たな相続が開始した場合、譲渡当事者ではない他の相続人は相続分を譲り受けた相続人に対して、特別受益や遺留分算定のための贈与に当たる旨主張することができることになります。

 

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不動産賃料を保証会社が代位弁済した場合の賃貸借契約の解除の可否

2020-10-14

1家賃保証会社の役割

 マンションやビルなどの一室を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結しますが、通常、仲介業者を通じて契約します。そして契約を締結するにあたって、保証人を求められることが原則となっており、賃借人が個人であれば自分の親族(通常は両親のいずれかが多いです)を保証人とすると思われます。もっとも、最近は、賃貸人が賃料の滞納を防止するために、保証会社を保証人とすることもよくあります。

 保証会社の役割は、賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人に対して滞納賃料を代わって支払うところにあります。これによって、賃貸人としては家賃が回収不能となる危険がなくなります。仮に保証会社と契約していなければ、賃貸人としては賃料の回収をあきらめて、賃借人に退去してもらうことでよしとしなければならなくなります。また、賃借人が勝手に出てしまい残置物が残っている場合であれば、賃貸人が訴訟を提起し、強制執行を行う必要があり、余計な費用がかかることになります。

 そして滞納賃料を代位弁済した保証会社は賃借人に請求していくことになります。

2改正民法における保証契約のあり方

 改正民法では、賃貸人が個人保証人と保証契約を結ぶ場合、極度額を定めなければならないとしております(465条の2)。これは、個人保証人が知らないうちに滞納賃料が多額になっていることがあるため、あらかじめ極度額を決めておくことで個人保証人の保護を図ることにしたのです。しかしながら、保証会社が保証人となる場合は、極度額を定める必要はありません。

 もっとも、保証会社は、賃貸人と保証契約を結ぶ際には、保証する金額の範囲を定めることが通常です。

3保証会社の代位弁済後に、賃借人に対する賃貸借契約解除及び建物明渡の可否

 保証会社が滞納賃料を賃貸人に支払った後、賃借人が保証会社に支払えば問題ありませんが、賃借人がそれ以降も賃貸人に支払うことなく、保証会社が賃貸人に支払い続けた場合、賃貸人は賃借人との賃貸借契約を解除し建物の明け渡しを求めることができるのでしょうか。保証会社が賃貸人に賃料を支払っている以上、賃借人に滞納がないのではないかが問題となります。

 この点について争われた裁判例(大阪高裁平成25年11月22日判決)があります。

 同裁判例では、「賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払いではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく、ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」と認定し、賃貸人による賃貸借契約の解除及び建物の明け渡しを認めました。賃借人は最高裁へ上告しましたが、棄却・不受理となり、確定しております。

 このように保証会社が賃貸人へ代位弁済したとしても、賃借人の賃料不払いの事実は無くなることはありませんので、賃貸人としては、3ヶ月以上、保証会社から支払ってもらっているのであれば、賃借人との賃貸借契約を解除することが可能となります。

 不動産のことでお悩みや疑問がある場合は、初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

個人破産制度における免責不許可事由と非免責債権について

2020-08-06

1 破産制度とは

  破産制度の目的とは、債権者、債務者及び利害関係人の権利関係を調整し、債務者の財産を公平に精算し、債務者の経済生活の再生の機会を確保することにあります。この内容が破産法1条に記載されております。

  破産手続を利用する債務者にとっては主に経済生活の再生を図ることにあります。経済生活の再生を図るとは、債務者が裁判所から免責許可決定を得ることにより、負債(借金)がすべて免責されるということを意味します。つまり簡単にいうと債権者に対して返済しなくてもよくなります。しかしながら、破産手続を利用しても負債が免責されない免責不許可事由と免責の効力が及ばない非免責債権が規定されています。

2 免責不許可事由とは

  免責不許可事由とは、破産手続を利用する債務者の行為を原因として、負債(借金)の免責を認めないとするものです。免責不許可事由は破産法252条1項に記載されています。主な免責不許可事由には以下のものがあります。

 (1)不当に財産を減少させる行為

 債権者への支払いが不能となった後に本来であれば清算対象となる財産を債務者が勝手に使用したり、処分したりする場合です。

 (2)不当に債務を負担し、不利益な処分行為

 債権者への支払いが不能となった後、著しく不利益な条件で債務を負担したり、信用取引で商品を買い入れ著 しく不利益な条件で処分する場合です。典型的にはクレジットカードで購入した商品をすぐに廉価で換金する行為が該当します。

 (3)不当に特定の債権者のみに返済する行為

 既に支払不能になっているにもかかわらず、特定の債権者のみに返済したり担保の設定をしたりする場合をいいます。

 (4)浪費や賭博などによる財産減少行為

 自らの生活レベル以上に財産を散財したり、競馬やパチンコなどのギャンブルなどで借金が増大した場合をいいます。

 (5)詐術による信用取引

 破産手続開始申立前開始1年前の日から破産手続開始申立までの間に支払い不能にありながら、住所、氏名、生年月日や負債額などの信用状態を偽り、借金や信用取引をする場合をいいます。

  これらの免責不許可事由があると、免責が認められず負債が残ったままになるのかと疑問に思われれるかもしれませんが、多くの場合は裁量的に免責が認められております。免責不許可事由がある場合でも、弁護士に話していただき、破産申立の際に正直に記載することが重要となってきます。

3 非免責債権とは

  破産手続を利用し、最終的に裁判所から免責許可決定が得られると原則として負債(借金)の返済義務がなくなります。しかしながら、一部の負債については免責の効果が及びません。このような免責の効果が及ばない負債を非免責債権と言います。非免責債権について破産法253条1項に記載があります。具体的には、➀税金、➁破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、③破産者が故意、重大な過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、➃養育費や婚姻費用、⑤雇用関係に基づいた使用人の請求権、⑥破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった請求権、⑦罰金等の請求があります。

4非免責債権に関する裁判例

 上記3➁については、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するのかどうか争われた裁判例(東京地裁平成28年3月11日判決)があります。事案は、原告が、被告に対し、被告の原告夫との不貞行為を理由としての慰謝料を請求したものとなります。被告は訴訟係属中に破産開始決定を受けるとともに免責許可決定を得たところ、原告は、被告の行為は悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に該当するので非免責債権であると主張しました。原告の慰謝料請求権が非免責債権であるとすれば、被告が免責許可決定を得ていたとしても、原告に対して慰謝料を支払わなければなりません。

 裁判例では、「悪意」とは「故意を超えた積極的な害意」であるとし、本件では被告の原告夫との不貞行為の態様や不貞発覚直後の原告に対する対応などから、被告の不法行為の違法性は低いとはいえないしながらも、原告夫の行為を考慮した上で、被告が一方的に原告夫を篭絡して原告の家庭の平穏を侵害する意図があったとまでは認定できず、被告には原告に対する積極的な害意があったということはできないとしました。結論として原告の慰謝料請求権は非免責債権に該当しないとされ、被告は慰謝料の支払義務を免れました。

 もっとも、本裁判例のように不貞行為に基づく慰謝料請求権がすべて非免責債権に該当しないというものではなく、個別具体的事情によれば非免責債権に該当することになります。

 破産手続において免責不許可事由に該当するのではないかや非免責債権に該当するのではないかなどのお悩みや疑問がある方は初回相談は無料とさせていただいておりますので、アーツ綜合法律事務所までご相談下さい。

 

 

 

 

 

 

改正民法-賃貸借契約への影響➁

2020-03-03

 令和2年4月1日に改正民法が施行され、賃貸借契約にも大きな影響を及ぼします。賃貸借契約の連帯保証人になる場合、連帯保証人が負担する最大限度額を取り決める必要があり、保証人が負担する最大限度額を極度額と言います。その取り決めがなければ保証契約は無効となります。その点は前回のコラムで記載しているとおりです。

1個人根保証契約の元本確定事由

 改正民法では、賃貸借契約の終了をまたずに保証人の負担額が確定する事情を新たに規定しております(民法465条の4第1項)。法律用語では、保証人の負担額が確定することを「元本の確定事由」といいます。「元本の確定事由」は以下のとおりとなっております。

  1. 保証人の財産に強制執行等がなされた場合

  2. 保証人が破産した場合

  3. 賃借人または保証人が死亡したとき

 上記の元本確定事由が発生した場合、保証人は上記事情が発生した時点までの債務を支払う責任が生じます。例えば賃借人が死亡した場合、保証人は賃借人が死亡した時点までの賃料等の支払義務を負います。死亡時点以降に生じた賃料等の債務については責任を負う必要はありません。

2保証すべき対象債務について

 注意すべきは保証人が保証すべき対象債務は賃料に限られるものではないということです。確かに保証すべき債務の多くが賃料であることは間違いないでしょうが、保証人は賃借人が賃貸人に対して負う可能性がある債務についてはすべて責任を負わなければなりません。例えば、原状回復費用や放置物の撤去費用などについても元本が確定するまでに発生していた場合、保証人は責任を負わなければなりません。

 もっとも、賃貸借契約時に保証人の極度額を80万円としていた場合、元本確定時点の滞納家賃や原状回復費用などを合わせると80万円を超える場合でもあっても、保証人は80万円を超えて責任を負担する必要はありません。

改正民法-賃貸借契約への影響①

2020-03-02

1 改正民法-個人根保証契約の保証人の責任

  今般、民法が改正され、令和2年4月1日から施行されます。民法改正により賃貸借契約ついても大きな影響を受けることになります。重要なものとしては賃借人の連帯保証人の責任が限定される点が挙げられます。通常、賃貸借契約を締結する場合、賃貸人から連帯保証人を求められ、賃借人は通常、親族や知人に連帯保証人になってもらいます。この場合、賃借人が家賃を滞納すると連帯保証人が代わって支払うことになります。しかし、賃借人の滞納額が1年や2年にも及んだ場合、保証人が予想外に多額の支払いをすることになってしまいます。これまでにこのような事例が多かったために、改正民法により保証人が負担する金額の最大限度額を取り決めすることにより保証人を保護することしました。保証人が負担する最大限度額を「極度額」といい、改正民法では個人根保証契約の保証人の責任(民法465条の2)として規定されております。

2 極度額の定め方について

  改正民法によれば個人根保証契約において保証人が負担する最大限度額を定めておかなければ契約が無効となります(465条の2第2項)。つまり、賃貸借契約において保証人が負担する最大限度額(極度額)を取り決めておかなければ、保証契約は無効となります。極度額の定め方ですが、「80万円」や「100万円」などと具体的な金額を設定する方法でも、「賃料1年分」とする定め方でもかまいません。もっとも後者の場合、更新時に賃料が増額され保証人の極度額も増額するのであれば保証人を保護する趣旨に反することになり、無効とされる可能性がありますので、「賃貸借契約締結時の賃料1年分」としておくのが妥当と解されます。

3 具体例

  例えば、賃借人の家賃の滞納額が100万円、保証人が負担する最大限度額(極度額)が80万円の場合、保証人は80万円を賃貸人へ支払えば、それ以上負担する必要はありません。また、保証人がそれまでに賃貸人へ20万円支払っていた場合、残り60万円を支払えばよいことになります。

  

 

フランチャイズ訴訟雑感

2019-11-14

 これまでにフランチャイズ本部や加盟店から多くの相談を受けてきましたが、フランチャイズ事業もコンビニだけでなく実に様々な事業があります。中にはフランチャイズ事業として成り立つのか疑問に思うものもあります。

 相談を受ける中でいくつかの訴訟を手掛けてきましたが、本部や加盟店のいずれの立場であっても訴訟で争うことは双方にとって「労多くして益少なし」という印象が拭えません。フランチャイズの場合、契約前に本部が提示した収益予測と加盟店が実際に開業した時の売上が大きく異なることから当初の説明と違うということで訴訟になるケースがほとんどです。

 訴訟になると加盟店に本部の説明義務違反を立証する必要があるのですが、立証に成功して本部の説明義務違反が認められたとしても、損害を算定する段階で裁判所は加盟店も独立の事業者であるとかフランチャイズ事業を精査せずに安易に意思決定をしたなどの理由により過失相殺がなされてしまうので、認定される損害額がかなり減額されてしまいます。このように本部にとっては損害賠償責任が認められると事業の見直しを迫られるでしょうし、加盟店にとっては実際に被った損害額よりも低い額しか認められないことが多いといえます。

 このような訴訟実態を考えると、フランチャイズ事業に加盟することを検討されている方は、検討している事業につき複数社からの説明を受けるとともに、自らも事業内容を納得するまで徹底的に検討し疑問があれば解消しておく必要があります。やはり安易に意思決定をしないことが重要といえます。一方、本部についても本部だけの利益追求の事業を構築するのではなく、本部・加盟店の双方が共存できる体制を構築すべきといえます。

 

 

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