賃貸借契約における賃貸人の連帯保証人に対する請求が制限される場合について

1 賃貸借契約における連帯保証人の責任

     マンションやビルなどの一室を借りる場合、賃貸人との間で不動産賃貸借契約を締結しますが、通常、賃借人は賃貸人から連帯保証人を求められます。連帯保証人は、賃借人とともに賃貸借契約から生じる賃借人の債務を負担することになります。例えば、賃借人が家賃を滞納していれば、滞納家賃を支払わなければならないですし、賃借人が物件を破損したりした場合は補修すべき責任を負わなければなりません。このように連帯保証人は責任が重くなる場合があるため、通常は親族になってもらうことが多いと思われます。

2 連帯保証人の負担義務の範囲が問題となった事例

    賃借人が家賃を滞納してからかなりの期間が経過しているにもかかわらず、賃貸人が即座に明け渡しを求めることがなく、滞納家賃が多額になってから連帯保証人に請求してくることがあります。連帯保証人とすれば賃貸人から請求を受けて初めて滞納家賃が多額になっていることを知ることになります。このような場合、連帯保証人は賃貸人から請求された金額すべてを支払わなければならないのでしょうか。原則的には連帯保証人は全額支払う必要がありますが、一定の条件が認められれば、連帯保証人は全額を支払う必要はありません。

 この点については区営住宅の賃貸借契約において、賃貸人が滞納家賃を連帯保証人に請求した事案において、連帯保証人への請求を制限した事例(東京高裁平成25年4月24日判決)があります。

    この事案では、賃借人が賃料不払いを続けながら、賃貸建物を明け渡さない場合、賃貸人は、保証人の支払債務が保証契約上想定されるよりも著しく拡大することを防止するために、保証人との関係で解除権等を状況に応じて的確に行使すべき信義則上の義務を負うとされ、賃貸人が権利行使を著しく遅滞したときは、著しい遅滞状態となった時点以降の賃料ないし賃料相当損害金を保証人に請求することは権利濫用として許されないと判断されております。

  実際には賃貸人がどの程度の期間、権利行使を放置すれば保証人への請求が権利濫用となるのかはケースバイケースなのですが、およその目安として2,3年と解されます。もっとも通常、期間のみならず、他の事情も考慮されて判断されます。

3 改正民法の規定について

    このようなトラブルが多かったことから、2020年に改正された民法では、親族や知人などの個人が賃借人の保証人となる場合には、知らぬ間に滞納賃料が増大することを防ぐために、賃貸借契約において保証人が負担しなければならない最大限度の負担額(極度額)を定めておかなければならなくなりました(民法465条の2)。

 改正された民法により、今後は前述したようなトラブルは減少すると解されますが、2020年4月1日以前に締結された賃貸借契約については、改正民法が適用されないので先ほどのトラブルが生じる可能性があります。

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